【翔斗】「俺が話しやすい相手といえば、陽介かな。あいつの浅知恵も無いよりマシだろ」
【弥生】「そう…だね」
弥生はいかにも不安そうだった。
いや、俺だって陽介に相談して解決するとは思っていない。
しかし、「一人より二人、二人より三人」ということもある。
そんなわけで、俺は、一部始終を陽介に話した。
【陽介】「それで? どうなるっていうの?」
【翔斗】「だから、どうしたらよいものかとおまえの意見を聞きたくて…」
【陽介】「そんなの、どうしようもないじゃん。
早田が受験やめたって、今野が機嫌直してくれるわけじゃないしー。
言っちゃったもんは仕方ないだろ」
こいつの浅知恵は、無いほうがマシだったかもしれない…。
【翔斗】「そんな冷たいこと言うな。受験をやめないように俺から説得はしたし、
本当にやめるとは思わないけど、勉強に影響してしまうかもしれない…」
【陽介】「俺としては、両方納得できないねー」
陽介が珍しく真剣な顔をした。
【陽介】「今野だってさ、嫌なこと言われたのは分かる。
でもそれで早田を責め続けて、なんになるわけ? 結局、すねてるだけじゃん。
自分の置かれた条件で戦うしかないんだよ。人生って、不公平なもんなんだよ。
早田のほうも、受験やめるって、その程度の気持ちで進学志望だったわけ?
やる気をなくすのは自由だけど、今度はそれを今野に恨まれたせいにするの?
俺に言わせりゃ、どっちもどっちだね。自分の人生に、責任持とうとしてない」
さらに言う。
【陽介】「翔斗。おまえにゃ、おまえの受験があるよな。
他人の世話焼いてて落ちても、俺は気の毒なんて思わないぜ。
早田とちがって、おまえはもともとヤバイんだからね」
【翔斗】「…おまえ、立派なこと言うけどさ…。進学できそうな大学が無かったとき、
『こんな頭に産んだ親が悪い』とかさんざん愚痴ってたの、どいつだっけ…?」
陽介の言い分にも一理ありそうな気がした。
しかし、一理あってもなんの解決にもならない。これは理屈じゃなく感情のもつれなのだ。
それから数日が過ぎた。
弥生はあいかわらず独りで、今野は弥生から露骨に目をそらしていた。
ところが数日して、放課後、俺は今野に呼び出された。
いったいどういう用件だろう…。
弥生にも一応、このことは伝えておいたほうがいいだろう。
【弥生】「え、難波君も呼び出されたの? 実は…私も…」
今野は弥生まで呼び出していたらしい。
今野は女子グループの中でも顔のきく奴だ。
まさか暴力はないだろうが、俺なら取り囲まれて何か言われてもどうにかなる。
だが、弥生はそうはいかない。ただでさえ落ち込んでいる時だ。
ここは、俺一人で行くべきだろうか…それとも、弥生と二人で行くほうがよいだろうか…。
(どちらかを選ぶ)
一人で行く弥生と一緒に行く