第五話

【翔斗】「俺が話しやすい相手といえば、陽介かな。あいつの浅知恵も無いよりマシだろ」

【弥生】「そう…だね」

弥生はいかにも不安そうだった。
いや、俺だって陽介に相談して解決するとは思っていない。
しかし、「一人より二人、二人より三人」ということもある。

そんなわけで、俺は、一部始終を陽介に話した。

【陽介】「それで? どうなるっていうの?」

【翔斗】「だから、どうしたらよいものかとおまえの意見を聞きたくて…」

【陽介】「そんなの、どうしようもないじゃん。
早田が受験やめたって、今野が機嫌直してくれるわけじゃないしー。
言っちゃったもんは仕方ないだろ」

こいつの浅知恵は、無いほうがマシだったかもしれない…。

【翔斗】「そんな冷たいこと言うな。受験をやめないように俺から説得はしたし、
本当にやめるとは思わないけど、勉強に影響してしまうかもしれない…」

【陽介】「俺としては、両方納得できないねー」

陽介が珍しく真剣な顔をした。

【陽介】「今野だってさ、嫌なこと言われたのは分かる。
でもそれで早田を責め続けて、なんになるわけ? 結局、すねてるだけじゃん。
自分の置かれた条件で戦うしかないんだよ。人生って、不公平なもんなんだよ。
早田のほうも、受験やめるって、その程度の気持ちで進学志望だったわけ?
やる気をなくすのは自由だけど、今度はそれを今野に恨まれたせいにするの?
俺に言わせりゃ、どっちもどっちだね。自分の人生に、責任持とうとしてない」

さらに言う。

【陽介】「翔斗。おまえにゃ、おまえの受験があるよな。
他人の世話焼いてて落ちても、俺は気の毒なんて思わないぜ。
早田とちがって、おまえはもともとヤバイんだからね」

【翔斗】「…おまえ、立派なこと言うけどさ…。進学できそうな大学が無かったとき、
『こんな頭に産んだ親が悪い』とかさんざん愚痴ってたの、どいつだっけ…?」

陽介の言い分にも一理ありそうな気がした。
しかし、一理あってもなんの解決にもならない。これは理屈じゃなく感情のもつれなのだ。


それから数日が過ぎた。
弥生はあいかわらず独りで、今野は弥生から露骨に目をそらしていた。

ところが数日して、放課後、俺は今野に呼び出された。
いったいどういう用件だろう…。
弥生にも一応、このことは伝えておいたほうがいいだろう。

【弥生】「え、難波君も呼び出されたの? 実は…私も…」

今野は弥生まで呼び出していたらしい。

今野は女子グループの中でも顔のきく奴だ。
まさか暴力はないだろうが、俺なら取り囲まれて何か言われてもどうにかなる。
だが、弥生はそうはいかない。ただでさえ落ち込んでいる時だ。

ここは、俺一人で行くべきだろうか…それとも、弥生と二人で行くほうがよいだろうか…。

(どちらかを選ぶ)

一人で行く

弥生と一緒に行く
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