第六話
俺は放課後、弥生と二人で、今野の待つ屋上に行くことにした。
今野はこれでもクラスの女子で顔のきくほうだ。
しかし、集団で待ち構えていても暴力はないだろう。
取り囲まれて罵られるようなら、弥生を守るのも俺の仕事だ。
しかし、意外にも今野は一人で待っていた。
【美咲】「弥生…」
弥生は黙ってうつむいていた。
【美咲】「弥生…あなた、大学あきらめるかもしれないんだって?」
【翔斗】「おまえ、一体どこでその話を聞いたんだ」
【美咲】「何言ってるの。あんたと北島の話し声が大きくて、教室の中まで丸聞こえだったのよ」
俺は陽介を廊下に呼び出して、小声で話したつもりだった。
きっと陽介のムダにでかい声が聞こえていたのだろう。
弥生はますます下を向くばかりだった。
【弥生】「それで…少しでも、美咲の気がすむのなら…」
【美咲】「バカ言ってるんじゃないわよ!」
今野が、弥生のほっぺたをはたいた。
俺は「何を…!」と言いかけたが、次の今野の言葉のほうが先だった。
【美咲】「あんた、何ぜいたく言ってるのよ! 私は行きたくても行けない。
それでどんなに、くやしい思いをしてるか分かってるの?
でも、あんたは違う。進学したければできる。あんた進学したいんでしょ?
その機会を捨てれば私が満足するとでも思ったの?」
【弥生】「み、美咲…」
【美咲】「私はたしかに、あなたの言葉で傷ついた。うざいとも思った。
でもそれは、あなたが…進学できる弥生が、うらやましかったから…。
そして、弥生に嫉妬してる自分が、嫌になってしまうから…。
もしもあなたが私のせいで進学をあきらめたら、私はもっと自分を嫌いになってしまう…」
【弥生】「美咲、違う! 美咲は悪くないよ! 私がひどいことを言っただけだもん…」
【美咲】「弥生…。受験、がんばりなよ。
私のかなえられない夢を、あなたがかなえるんだ。あなたは、私の夢も一緒に背負ってるのよ?
私のぶんまで、がんばってもらわなくちゃ…でなきゃ、私も悲しいよ…」
弥生は涙をぽろぽろこぼして、今野に謝ろうとしている。
【美咲】「それに…難波君。あんたも志望校同じなんでしょ?
なら、これからは難波君が、弥生を守ってちょうだい。
私は同じところに行けないから。
まぁ難波君が、弥生と同じところに行けるかどうか、分からないけどね」
【翔斗】「ほ…ほっとけ。きっと行ってやるわい」
【美咲】「あ、言ったわね? その言葉、ちゃんと守りなさいよ!」
「大けがの功名」というやつだろうか。
陽介がバカでかい声で言い放ったせいで、今野もいろいろと考えたのかもしれない。
いずれにせよ結果オーライだ。弥生は今野とも仲直りすることができた。
そして、受験勉強に精を出すことができるようになった。
後で知ったが、この出来事は今野が県外の企業に就職の内定をもらった日だった。
今野も思っていたよりもずっといい奴だ。そう思った。
陽介も、市内の小さな会社に内定をもらった。
こうして俺たち受験組だけが残された。
これで、現在一番やばいのは俺になった。
人生で初めてというくらいがんばって、どうにか、ボーダーラインにこぎつけた。
【弥生】「今日はいよいよセンター試験だよ。おたがい、がんばろうね!」
【翔斗】「とっ…とにかく、ぜ、全力を尽くします…」
俺たちの受ける地元国立大学は、ほとんどセンター試験で合否が決まる。
弥生の受ける国際社会学部はまだしも二次試験の英語も重視されるが、
俺の受ける文学部は、二次は面接と小論文だけで、ほとんどセンターで決着する。
予想はしていたが俺は苦戦した。
緊張しているせいで、数学の試験中に腹が痛くなってしまった。
【翔斗】「やべえ…トイレに行きたいけど、一度教室を出たら戻れない…」
カンニング防止のため、テスト中に席を離れたら、もうそのテストの続きは受けられない。
よりによって数学なので、腹痛と便意に耐えながら受けても、とても思考できない。
ここは数学を捨ててトイレに行くべきか。
それとも、なんとか終了までがまんして、休み時間にかけこむか。
いや、休み時間なんて短いから、中途半端でトイレから出たら、
次の教科でまた腹痛に見舞われるかもしれない。
【翔斗】「お、俺はちょっとした失敗でも命取りになるんだ…。
ここで数学を捨てたら、おしまいかも…。でも、次の科目に影響したらもう最期だ…」
(どちらかを選ぶ)
数学をあきらめてトイレに行く
休み時間になるまで我慢する
今野はこれでもクラスの女子で顔のきくほうだ。
しかし、集団で待ち構えていても暴力はないだろう。
取り囲まれて罵られるようなら、弥生を守るのも俺の仕事だ。
しかし、意外にも今野は一人で待っていた。
【美咲】「弥生…」
弥生は黙ってうつむいていた。
【美咲】「弥生…あなた、大学あきらめるかもしれないんだって?」
【翔斗】「おまえ、一体どこでその話を聞いたんだ」
【美咲】「何言ってるの。あんたと北島の話し声が大きくて、教室の中まで丸聞こえだったのよ」
俺は陽介を廊下に呼び出して、小声で話したつもりだった。
きっと陽介のムダにでかい声が聞こえていたのだろう。
弥生はますます下を向くばかりだった。
【弥生】「それで…少しでも、美咲の気がすむのなら…」
【美咲】「バカ言ってるんじゃないわよ!」
今野が、弥生のほっぺたをはたいた。
俺は「何を…!」と言いかけたが、次の今野の言葉のほうが先だった。
【美咲】「あんた、何ぜいたく言ってるのよ! 私は行きたくても行けない。
それでどんなに、くやしい思いをしてるか分かってるの?
でも、あんたは違う。進学したければできる。あんた進学したいんでしょ?
その機会を捨てれば私が満足するとでも思ったの?」
【弥生】「み、美咲…」
【美咲】「私はたしかに、あなたの言葉で傷ついた。うざいとも思った。
でもそれは、あなたが…進学できる弥生が、うらやましかったから…。
そして、弥生に嫉妬してる自分が、嫌になってしまうから…。
もしもあなたが私のせいで進学をあきらめたら、私はもっと自分を嫌いになってしまう…」
【弥生】「美咲、違う! 美咲は悪くないよ! 私がひどいことを言っただけだもん…」
【美咲】「弥生…。受験、がんばりなよ。
私のかなえられない夢を、あなたがかなえるんだ。あなたは、私の夢も一緒に背負ってるのよ?
私のぶんまで、がんばってもらわなくちゃ…でなきゃ、私も悲しいよ…」
弥生は涙をぽろぽろこぼして、今野に謝ろうとしている。
【美咲】「それに…難波君。あんたも志望校同じなんでしょ?
なら、これからは難波君が、弥生を守ってちょうだい。
私は同じところに行けないから。
まぁ難波君が、弥生と同じところに行けるかどうか、分からないけどね」
【翔斗】「ほ…ほっとけ。きっと行ってやるわい」
【美咲】「あ、言ったわね? その言葉、ちゃんと守りなさいよ!」
「大けがの功名」というやつだろうか。
陽介がバカでかい声で言い放ったせいで、今野もいろいろと考えたのかもしれない。
いずれにせよ結果オーライだ。弥生は今野とも仲直りすることができた。
そして、受験勉強に精を出すことができるようになった。
後で知ったが、この出来事は今野が県外の企業に就職の内定をもらった日だった。
今野も思っていたよりもずっといい奴だ。そう思った。
陽介も、市内の小さな会社に内定をもらった。
こうして俺たち受験組だけが残された。
これで、現在一番やばいのは俺になった。
人生で初めてというくらいがんばって、どうにか、ボーダーラインにこぎつけた。
【弥生】「今日はいよいよセンター試験だよ。おたがい、がんばろうね!」
【翔斗】「とっ…とにかく、ぜ、全力を尽くします…」
俺たちの受ける地元国立大学は、ほとんどセンター試験で合否が決まる。
弥生の受ける国際社会学部はまだしも二次試験の英語も重視されるが、
俺の受ける文学部は、二次は面接と小論文だけで、ほとんどセンターで決着する。
予想はしていたが俺は苦戦した。
緊張しているせいで、数学の試験中に腹が痛くなってしまった。
【翔斗】「やべえ…トイレに行きたいけど、一度教室を出たら戻れない…」
カンニング防止のため、テスト中に席を離れたら、もうそのテストの続きは受けられない。
よりによって数学なので、腹痛と便意に耐えながら受けても、とても思考できない。
ここは数学を捨ててトイレに行くべきか。
それとも、なんとか終了までがまんして、休み時間にかけこむか。
いや、休み時間なんて短いから、中途半端でトイレから出たら、
次の教科でまた腹痛に見舞われるかもしれない。
【翔斗】「お、俺はちょっとした失敗でも命取りになるんだ…。
ここで数学を捨てたら、おしまいかも…。でも、次の科目に影響したらもう最期だ…」
(どちらかを選ぶ)
数学をあきらめてトイレに行く
休み時間になるまで我慢する
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