第四話
【翔斗】「昔は本当に仲がよかったじゃないか。どうして早田をうざいと思うようになったんだ?」
今野はうつむいて、声を絞り出した。
【美咲】「だって…弥生が悪いのよ。弥生が、私のプライドを傷つけた…。
先に裏切ったのはあの子なのよ!」
【翔斗】「…い、一体、何があったんだ…」
俺は今野と親しいわけじゃないので、今野のことはよく知らなかった。
今野の家は経済的に苦しく、中学の時から大学進学はあきらめさせられたという。
当時の今野は成績優秀で、弥生よりも上だったそうだ。
しかし目標を失った今野はやる気をなくし、今では、俺とそんなに変わらなくなっている。
【美咲】「家の事情で就職するって言った私を、弥生は、憐れんでこう言ったのよ。
『美咲、せっかく頭良いのに、お金がないと何もできないんだね。かわいそうに』って。
お金がないのは本当。だから進学できないのも本当。でも、憐れみなんか欲しくないっ。
私が一番くやしくて、でも我慢して笑って見せてることを、あの子は…」
俺は何も言うことができなかった。
今野のプライドが高いことは俺も知っている。憐れみを受けることが、何より屈辱なのだ。
【美咲】「私が一番つらいことを、弥生はえぐった…。許せない…」
【弥生】「美咲…まさか、私…」
いつの間にか弥生がそこにいた。
【弥生】「私…そんなつもりで言ったんじゃなかった。美咲を、傷つけてたなんて…」
【美咲】「そんなつもりもどんなつもりも、私は憐れんでほしいなんて思わない!」
【弥生】「ごめんなさい…美咲、ごめんなさい…」
今度は弥生が泣き出した。
俺はどうしたら良いのかわからず、何もできなかった。
弥生は泣きながらその場を去って行った。
【翔斗】「今野…。早田はたしかに無神経だったけどさ、悪気じゃなかった。
それはおまえも分かってるだろ? なんとか、許してやれないか?」
【美咲】「分かったようなこと言うんじゃないよ!」
これ以上、俺には何もできなかった。
それから弥生は、今野たちのグループと距離を置くようになった。
弥生はいつの間にか独りになっていた。
友達がいなくなったというより、自分から友達を避けていた。
【翔斗】「早田…。なにも、今野以外の奴とまで距離を置く必要はないんじゃないか?
今野とは気まずいだろうけど、他のやつらは関係ないだろう…」
【弥生】「難波君…私、自信なくしちゃった。美咲には謝っても許してもらえないし…。
どうしたらいいのかな…。私も、進学やめたら、許してもらえるかな…」
【翔斗】「バカ、そんなことして何になるんだ。
おまえが進学をあきらめたからって、今野が救われるとでも言うのかよ。
おまえはおまえだ。しっかり勉強して大学に行こう!」
【弥生】「う、うん…」
弥生も分かってるはずだ。自分を傷つけてみても、何の意味もないことくらい。
理屈では分かっていても、人のいい弥生のことだ、自分を許せないんだろう。
【弥生】「難波君…。どうすれば、いいのかな…」
【翔斗】「どうすれば、と言われても…。う~ん、どうしよう…」
難しい問題だが、弥生のことが好きな俺としては、放っておけない。
かといって、何もアイデアが浮かばなかった。
【翔斗】「ここは、他の人にも相談してみよう…。三人寄ればお釈迦の知恵、と言うからな…」
【弥生】「文殊の知恵、だよ…」
【翔斗】「そんなことはいいんだよっ。細かいことは気にしない! ここは…」
俺は提案した。
【翔斗】(どちらかを選ぶ)
「こういうことは、権藤先生に相談しよう。ムダそうな教員免許も紙切れよりマシだろ」
「俺が話しやすい相手といえば、陽介かな。あいつの浅知恵も無いよりマシだろ」
今野はうつむいて、声を絞り出した。
【美咲】「だって…弥生が悪いのよ。弥生が、私のプライドを傷つけた…。
先に裏切ったのはあの子なのよ!」
【翔斗】「…い、一体、何があったんだ…」
俺は今野と親しいわけじゃないので、今野のことはよく知らなかった。
今野の家は経済的に苦しく、中学の時から大学進学はあきらめさせられたという。
当時の今野は成績優秀で、弥生よりも上だったそうだ。
しかし目標を失った今野はやる気をなくし、今では、俺とそんなに変わらなくなっている。
【美咲】「家の事情で就職するって言った私を、弥生は、憐れんでこう言ったのよ。
『美咲、せっかく頭良いのに、お金がないと何もできないんだね。かわいそうに』って。
お金がないのは本当。だから進学できないのも本当。でも、憐れみなんか欲しくないっ。
私が一番くやしくて、でも我慢して笑って見せてることを、あの子は…」
俺は何も言うことができなかった。
今野のプライドが高いことは俺も知っている。憐れみを受けることが、何より屈辱なのだ。
【美咲】「私が一番つらいことを、弥生はえぐった…。許せない…」
【弥生】「美咲…まさか、私…」
いつの間にか弥生がそこにいた。
【弥生】「私…そんなつもりで言ったんじゃなかった。美咲を、傷つけてたなんて…」
【美咲】「そんなつもりもどんなつもりも、私は憐れんでほしいなんて思わない!」
【弥生】「ごめんなさい…美咲、ごめんなさい…」
今度は弥生が泣き出した。
俺はどうしたら良いのかわからず、何もできなかった。
弥生は泣きながらその場を去って行った。
【翔斗】「今野…。早田はたしかに無神経だったけどさ、悪気じゃなかった。
それはおまえも分かってるだろ? なんとか、許してやれないか?」
【美咲】「分かったようなこと言うんじゃないよ!」
これ以上、俺には何もできなかった。
それから弥生は、今野たちのグループと距離を置くようになった。
弥生はいつの間にか独りになっていた。
友達がいなくなったというより、自分から友達を避けていた。
【翔斗】「早田…。なにも、今野以外の奴とまで距離を置く必要はないんじゃないか?
今野とは気まずいだろうけど、他のやつらは関係ないだろう…」
【弥生】「難波君…私、自信なくしちゃった。美咲には謝っても許してもらえないし…。
どうしたらいいのかな…。私も、進学やめたら、許してもらえるかな…」
【翔斗】「バカ、そんなことして何になるんだ。
おまえが進学をあきらめたからって、今野が救われるとでも言うのかよ。
おまえはおまえだ。しっかり勉強して大学に行こう!」
【弥生】「う、うん…」
弥生も分かってるはずだ。自分を傷つけてみても、何の意味もないことくらい。
理屈では分かっていても、人のいい弥生のことだ、自分を許せないんだろう。
【弥生】「難波君…。どうすれば、いいのかな…」
【翔斗】「どうすれば、と言われても…。う~ん、どうしよう…」
難しい問題だが、弥生のことが好きな俺としては、放っておけない。
かといって、何もアイデアが浮かばなかった。
【翔斗】「ここは、他の人にも相談してみよう…。三人寄ればお釈迦の知恵、と言うからな…」
【弥生】「文殊の知恵、だよ…」
【翔斗】「そんなことはいいんだよっ。細かいことは気にしない! ここは…」
俺は提案した。
【翔斗】(どちらかを選ぶ)
「こういうことは、権藤先生に相談しよう。ムダそうな教員免許も紙切れよりマシだろ」
「俺が話しやすい相手といえば、陽介かな。あいつの浅知恵も無いよりマシだろ」
スポンサードリンク