第四話
【翔斗】「は…離してくれよ!」
俺は今野の手を振りほどいて、弥生の姿を追った。
ずっと向こうの弥生は人混みに隠れて、見失ってしまった。
しかしきっと、家に帰ろうとするだろう。
弥生の家のほうに向けて走り続け、家の近くでやっと弥生を発見した。
【翔斗】「早田! 早田!」
【弥生】「な…なに?」
弥生は俺にびっくりしながらも、平静を装って振り向いた。
【弥生】「美咲はどうしたの? 置いてきていいの?」
【翔斗】「聞いてくれ。俺と今野は、街で偶然会っただけなんだよ」
【弥生】「べ…別に、ごまかす必要なんかないよ。
私にとって美咲は親友だし、難波君も友達だし、
二人が仲良くするの、私に隠すことなんか…」
【翔斗】「いや本当なんだよ。俺と今野は特に親しくなんかないって」
弥生の表情が急に不機嫌になる。
【弥生】「じゃあ…どうして、塾のはずの美咲と、家で勉強してるはずの難波君が、
街で仲良くデートしてるのよ? 二人とも私の誘いを断っておいて!
照れくさくて本当の用事を言えなかったのなら、それでいいのよ。
でもどうして、嘘の上に嘘を重ねるのよ!」
【翔斗】「今野が街にいた理由は俺も知らない。俺は、勉強中ひと休みに出ただけだ」
【弥生】「並んで歩いてて、どう見たらそう見えるの? 付き合うのは自由だからいいの!
私だって、デートを邪魔するほど大事な用事で誘ったわけじゃないから。
私が怒ってるのは、あんたが嘘ばっかつくからよ!」
そう言い放つと、弥生は家のほうに走って行った。
俺と今野のあのようすを見たら、弥生がそう思い込むのは無理もないことだ。
翌日から、俺と弥生は気まずい雰囲気になってしまった。
責任を感じてか、今野も俺を避けている。
街にいた理由を尋ねても答えてくれなかった。
やがて今野は県外の会社に就職が決まった。
陽介も、市内の小さな会社に決まった。
弥生は黙々と受験勉強を続けている。
俺だけが、勉強にも意欲が湧かず、合格ラインから遠いままだった。
【権藤】「難波君。ちょっと、生徒指導室にきなさい」
担任の権藤先生に呼び出された。
【権藤】「難波君。もう受験まで時間がないが、正直言って君の成績では無理だろう。
志望校のレベルを落とすか、もしも就職に切り替えるなら早いほうがいい」
【翔斗】「うち…私立はダメって言われてるので。
それに、親は大学行けって言うし、自分でもずっとそのつもりだったし…」
【権藤】「ならレベルを落として、隣県の公立大学ならどうだ?
…いや、はっきり言うと、そこも非常に厳しいんだがね。
とにかく今の志望校に受かる確率は、限りなくゼロに近い。
公立か、就職か…どちらか、だな」
【翔斗】「限りなくゼロじゃないですよ。模試では合格可能性20%だから、五回受けたら一回は…」
【権藤】「五回受けるって、君、何浪する気?」
俺の言葉には説得力がなかった。
大体、20%の人が五人受けたら一人受かってるのだろうか。
たいてい全員落ちてる気がするが。
俺の実力では、初めからこうなることは分かっていたのかもしれない。
県外に出たら、弥生とは離れてしまう。
しかし近くにいるからと言って、どうなると言うのだろう。
就職したって忙しくなって弥生と会える暇はなくなる。
将来を考えれば大学は出たほうがいい。
ただ、公立も非常に厳しいとなると…。
【翔斗】(どちらかを選ぶ)
「俺、隣県の公立大学をチャレンジしてみます」
「俺、受験はあきらめて就職先を探します」
俺は今野の手を振りほどいて、弥生の姿を追った。
ずっと向こうの弥生は人混みに隠れて、見失ってしまった。
しかしきっと、家に帰ろうとするだろう。
弥生の家のほうに向けて走り続け、家の近くでやっと弥生を発見した。
【翔斗】「早田! 早田!」
【弥生】「な…なに?」
弥生は俺にびっくりしながらも、平静を装って振り向いた。
【弥生】「美咲はどうしたの? 置いてきていいの?」
【翔斗】「聞いてくれ。俺と今野は、街で偶然会っただけなんだよ」
【弥生】「べ…別に、ごまかす必要なんかないよ。
私にとって美咲は親友だし、難波君も友達だし、
二人が仲良くするの、私に隠すことなんか…」
【翔斗】「いや本当なんだよ。俺と今野は特に親しくなんかないって」
弥生の表情が急に不機嫌になる。
【弥生】「じゃあ…どうして、塾のはずの美咲と、家で勉強してるはずの難波君が、
街で仲良くデートしてるのよ? 二人とも私の誘いを断っておいて!
照れくさくて本当の用事を言えなかったのなら、それでいいのよ。
でもどうして、嘘の上に嘘を重ねるのよ!」
【翔斗】「今野が街にいた理由は俺も知らない。俺は、勉強中ひと休みに出ただけだ」
【弥生】「並んで歩いてて、どう見たらそう見えるの? 付き合うのは自由だからいいの!
私だって、デートを邪魔するほど大事な用事で誘ったわけじゃないから。
私が怒ってるのは、あんたが嘘ばっかつくからよ!」
そう言い放つと、弥生は家のほうに走って行った。
俺と今野のあのようすを見たら、弥生がそう思い込むのは無理もないことだ。
翌日から、俺と弥生は気まずい雰囲気になってしまった。
責任を感じてか、今野も俺を避けている。
街にいた理由を尋ねても答えてくれなかった。
やがて今野は県外の会社に就職が決まった。
陽介も、市内の小さな会社に決まった。
弥生は黙々と受験勉強を続けている。
俺だけが、勉強にも意欲が湧かず、合格ラインから遠いままだった。
【権藤】「難波君。ちょっと、生徒指導室にきなさい」
担任の権藤先生に呼び出された。
【権藤】「難波君。もう受験まで時間がないが、正直言って君の成績では無理だろう。
志望校のレベルを落とすか、もしも就職に切り替えるなら早いほうがいい」
【翔斗】「うち…私立はダメって言われてるので。
それに、親は大学行けって言うし、自分でもずっとそのつもりだったし…」
【権藤】「ならレベルを落として、隣県の公立大学ならどうだ?
…いや、はっきり言うと、そこも非常に厳しいんだがね。
とにかく今の志望校に受かる確率は、限りなくゼロに近い。
公立か、就職か…どちらか、だな」
【翔斗】「限りなくゼロじゃないですよ。模試では合格可能性20%だから、五回受けたら一回は…」
【権藤】「五回受けるって、君、何浪する気?」
俺の言葉には説得力がなかった。
大体、20%の人が五人受けたら一人受かってるのだろうか。
たいてい全員落ちてる気がするが。
俺の実力では、初めからこうなることは分かっていたのかもしれない。
県外に出たら、弥生とは離れてしまう。
しかし近くにいるからと言って、どうなると言うのだろう。
就職したって忙しくなって弥生と会える暇はなくなる。
将来を考えれば大学は出たほうがいい。
ただ、公立も非常に厳しいとなると…。
【翔斗】(どちらかを選ぶ)
「俺、隣県の公立大学をチャレンジしてみます」
「俺、受験はあきらめて就職先を探します」
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