第五話

【翔斗】「俺、隣県の公立大学をチャレンジしてみます」

【権藤】「そうか。でも、そこも厳しいことは忘れるな。今から勉強、がんばれよ」

その公立大学は、模試では40%だった。


入試には、思わぬ失敗をすることもあれば、まぐれ当たりもある。
俺はこのとき、まぐれ当たりに恵まれて、公立大学に合格することができた。
志望校、弥生と同じ学校ではなかったが、俺の大学生活が始まった。

【翔斗】「えっと…科目登録の手続きって、どうやればいいんですか?
すみません、新入生なもので、わからなくて…」

【事務員】「あ、新入生の方ですね。まずこの書類のここに…あら?
あなた、もしかして難波君?」

【翔斗】「えっ? 俺を知ってるんですか?」

【事務員】「やっぱりそうなんだ。なんか、小さいころの面影があったから…」

【翔斗】「ち、小さいころ??」

事務員の女性の名札を見る。

『早田』と書いてあった。

【翔斗】「あっ……もしかして、は、葉月さんっ!」

【葉月】「そうよ。早田葉月。昔、弥生ちゃんの家で何度か一緒に遊んだでしょ?」

葉月さんは、弥生のいとこのお姉さんだ。
昔は近所に住んでいて、俺が小学校の三年生くらいのころに引っ越して行った。

何を隠そう、俺は小さいころは、弥生よりも葉月お姉さんに憧れていた。

【葉月】「今は科目登録の説明ね。でもよかったら、今度私の家に遊びにおいで。
実はね、私、もうすぐ結婚するの…そしたら、仕事もやめて、遠くに行っちゃうから…」

【翔斗】「せっかく葉月さんと再会できたのにまた会えなくなるのは残念ですけど、
でも、ご結婚おめでとうございます!」

俺はその数日後、葉月さんのアパートにお邪魔した。

【葉月】「翔ちゃんか、なつかしいなぁ…。弥生ちゃんとは今も仲良くしてくれてる?」

【翔斗】「いえ、それが…」

俺は、弥生に受けた誤解と、そのあと気まずくなってしまったことを葉月さんに話した。

【葉月】「そうなんだ…。それは悲しいよね。
今度、私から、弥生ちゃんに話しておくから」

【翔斗】「ありがとうございます…よろしくお願いします」


偶然とは分からないものだ。
俺が弥生に誤解されたのも偶然なら、非常に厳しいと言われたこの大学に受かったのも偶然。
そこで葉月さんが働いていたのも、また、思いもよらない偶然だった。

【葉月】「この写真も、弥生ちゃんに送ってあげようかな」

それは、小さいころの俺と弥生と葉月さんが一緒に写ってる写真だった。
葉月さんのお父さんが撮ってくれたもので、弥生はこの写真を持っていない。
昔のことを思い出せば、弥生も俺のことを恋しく思ってくれるだろう、
という葉月さんの心づかいだった。


しばらくして、俺の手元に、弥生からの手紙が届いた。

そこには、誤解してしまったことへの謝罪と、また友達として交流したい旨が書かれてあった。
そして…。

『実は私、大学に入って、彼氏ができました。難波君も良い彼女をみつけてね』

【翔斗】「ばかやろう…。おまえ以上に良い彼女なんて、いるわけないじゃんかよ…!」

葉月さんは結婚して遠いところに行ってしまった。
そして、弥生も、俺の手の届かないところに行ってしまった…。

俺たちは、結局、友達を超えることはできなかった。



Ending No.9 翔斗失恋END

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