第三話

【翔斗】「せっかく誘ってもらったのに悪いけど、俺、勉強がんばることにしたから」

【弥生】「あ、そうなの…。今日の三者面談で、なにかあったの?」

【翔斗】「まあな。俺、進学することにしたから…」

【弥生】「そうなんだ。じゃあ、勉強の邪魔はできないね。うん、がんばって!」

【翔斗】「おう」

…とは言ったものの、せっかく弥生とお茶できる機会を失ったのは惜しい。
いや、受験を決めたからには、女と遊んでるわけにはいかんのだ!
と気合いを入れてみたが、もともと進学希望の動機が女なのだから、気合いが入らない。

【翔斗】「ああ、そこまでの愛を持っている俺の心はなんて純粋なんだろう…」

進学の動機がものすごく不純なのはあえて無視する。

家に帰って参考書を開く。

うーむ、なるほど。全然わからん。
しかし合格への道のりが遠いことだけは分かった。これで今日は重要なことを学んだぞ。

そろそろ息抜きでもするか…(早っ)

勉強ばかりでは体に毒だ。一時間もせずに俺はそう考え直して、散歩に出た。

あてもなく街をぶらぶら歩く。

と、商店街でばったり会ったのが、今野だった。
今野は塾だから弥生の誘いを断った…と聞いたが、どうしてここに…。
尋ねようかとも思ったが、ややこしい話になりそうなので、やめておいた。

【翔斗】「おう今野。おまえ、今日の三者面談どうだったんだ?」

無難な話を振ってみる。

【美咲】「別に…私は、もともと就職志望だから…」

【翔斗】「そりゃ意外だ。おまえ、塾にも通ってるから進学だと思ったよ」

【美咲】「塾は、授業に遅れないためよ。就職だって、成績が悪いと不利だから…」

【翔斗】「ちなみに俺は進学を希望したぞ」

【美咲】「…あんたこそ塾に行かなくて大丈夫なの?」

そんな話をしながら、二人で街を歩いた。
俺は今野とそれほど親しくなかったので、どこか新鮮な気分である。
俺は特に何も用がないので、今野の行く店に適当について行った。

間が悪い、とはこのことだろうか。
ちょうど喫茶店の前を通りかかった時、そこから弥生が出てきたところだった。

【弥生】「えっ美咲…今日は…あれ? それに難波君も…」

やばい。これはやばすぎる。
今野もすぐに言い訳が浮かばなかったようだ。俺も黙りこくってしまった。

【弥生】「あ、あはは…二人とも、そういうことだったんだね。ごめん、邪魔…しちゃって…」

弥生は涙を隠せなくなって、「それじゃ!」と言って逃げ出した。

【翔斗】「そ、早田! 違うんだ、話を聞け!」

俺は慌てて弥生を追いかけようとしたが、今野が俺の腕をつかんだ。

【美咲】「いいのよ、追わなくても」

【翔斗】「よくないだろ。あいつ、俺たちがデートでもしてると勘違いしてるぞ!」

【美咲】「いいじゃない。デートじゃなくても、一緒にいたのは事実なんだから」

今野は、弥生とは中学以来の親友のはずだ。
その今野にしては不自然なくらい、弥生を突き放そうとしている。
塾に行くというのも嘘だった。何か、理由があるのだろうか…?

弥生はもうずっと遠くに走り去ろうとしていた。

(どちらかを選ぶ)

今野の手を振り払って弥生を追いかける

弥生は追わず、今野にわけを尋ねる
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