第七話

【翔斗】「えーい、白川法皇にちがいない! こっちだあ!」


そしてついに、合格発表の日を迎えた。

俺は会場まで行って、自分の受験番号があるかどうかを、
目を皿のようにして必死に探した。

【翔斗】「ええと…5963…5963は…」

掲示板には、受験番号がずらりと並んでいる。

5952、5956、5957、5960…5963…

【翔斗】「あった! あったぞ俺! やったぁーーーーーっ!」

よかった。あのとき白川法皇を選ばなかったら、危なかったかもしれない。
「鴨川の流れと双六のさいころと比叡山だけは思い通りにならぬ」
と言ったのは白川法皇で正解だった。

【弥生】「難波君、受かったの? おめでとう! 私も受かったよ!」

【翔斗】「早田もおめでとう! これから一緒に大学生だね、早田…い、いや、弥生さん…」

弥生は少し顔を伏せて赤くなった。

【弥生】「ど、どうして急に名前で呼んだりするの…!」

【翔斗】「い、いや、えーと…合格テンションってやつかな。気にするなよ、弥生さん…!」


こうして俺たちは目標どおり同じ大学に通うことになった。
学部は別々だが、会える機会はいくらでもある。
高校時代よりも自由時間が増えたおかげで、一緒に過ごす時間も増えた。

俺たちは一緒のサークルにも入った。
『SQS団』=「世界のQuestionを大いに紹介する団」という、不思議探しサークルだ。

そこでも俺たちは仲良しで、付き合ってるんじゃないかという噂も立てられた。

【冬月】「あんたら本当に付き合ってないの? えぇ? 隠し事はよくないよ?」

と、団長の涼寺冬月にも冷やかされた。
某アニメのパロディーなのに、団長の名前が駆逐艦になってるのは気にしないでほしい。


楽しい学生生活の日々が過ぎていった。

クリスマスの日、俺は弥生にプレゼントを渡すことにして、
ついに告白する決意を固めた。

【翔斗】「ねえ、弥生さん…実は今日は、お願いがあるんだ」

【弥生】「なあに?」

弥生が無邪気な笑顔で聞いてくる。

【翔斗】「これから…『弥生さん』じゃなくて、『弥生』って呼んでいいか?」

【弥生】「そぉねえ…私たち、もうずいぶん長いからね。それもいいかな」

【翔斗】「じゃあ、弥生。それで、今日はもうひとつお願いがあるんだ」

【弥生】「なぁに、翔斗くん?」

【翔斗】「弥生。お、俺……俺と……俺と、付き合ってほしい!」

沈黙が走った。弥生が動揺しているのが分かった。
そりゃそうだろう。ドラマみたいな告白を受けるなんて、思っていなかっただろうから。

でも弥生、どうか、OKしてくれ。俺と付き合ってくれ。頼む!

長い沈黙のあと、弥生が答えた。

【弥生】「…ごめんね。私、今は…誰とも、付き合わない」

ショックだった。

【翔斗】「ど、どうして…? 俺のこと…」

【弥生】「翔斗くんが嫌いなんじゃないよ。でも、私は美咲と別れた時に思ったの。
親しくなればなるほど、別れることがつらくなる。だから、私は…」

【翔斗】「俺は、弥生と別れたりなんかしない!」

【弥生】「中学で、美咲と親友になったときも、美咲はそう言った。
ずっと一緒だ、って。そう約束した。でも、時がたてば人の心は変わる。
翔斗くんを信用してないんじゃないよ。
でも…今の私には、まだ…友達以上を、受け入れる準備がないの…」

【翔斗】「だったら、いつか、弥生の心の準備ができたときに…」

【弥生】「うん。その時になら、いいよ、って言えると思う」

【翔斗】「俺は待つよ。弥生がそう言ってくれるまで、ずっと…ずっと…」


言葉どおりに、俺は待った。ずっと、ずっと、いつまでも。

だが、弥生が俺にその返事をしてくれることはなかった。
学生時代はあっという間に終わり、俺と弥生は、別々の会社に就職した。

弥生は今でも誰とも結婚せず、誰とも付き合わず、優秀な女性管理職として活躍している。
あいつは、恋愛や結婚、そういうもののない人生を選んだのだ。



Ending No.5 友達どまりEND

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