第五話

【翔斗】「きっとウが正解にちがいない。ウだあああ!!」


そしてついに、合格発表の日を迎えた。

俺は会場まで行って、自分の受験番号があるかどうかを、
目を皿のようにして必死に探した。

【翔斗】「ええと…5963…5963は…」

掲示板には、受験番号がずらりと並んでいる。

5952、5956、5957、5960…5963…

【翔斗】「あった! あったぞ俺! やったぁーーーーーっ!」

あのとき、「ウ」を選んでいたのが正解だった。
「オ」を選んでいたら、落ちていたかもしれない。

歓喜にわき上がる俺に、弥生が声をかける。

【弥生】「難波君、受かったんだね。おめでとう。本当に…おめでとう」

【翔斗】「ありがとう! 春からは一緒に大学生活を楽しもう、早田…いや、やよ…い、弥生さん…」

弥生がふっと戸惑った表情を見せる。

【翔斗】「あっ…いやごめん。ちょ、ちょっと浮かれて言ってみただけだよ、早田」

【弥生】「え…あの、いや…そうじゃなくて…」

弥生が急に下を向いて、涙をこぼした。

【弥生】「……私、だめだった……」

【翔斗】「…えっ…」

俺は受かった。だが、弥生が落ちていたのだ。そんな馬鹿な。
俺よりずっと成績の良い弥生が…しかも、あんなに勉強していたのに。

【弥生】「勉強は…したよ。でも、集中できなかった。これでいいのか…って」

【翔斗】「グループを外されたことか? 今野が何をやっても、おまえは気にする必要なかったのに!」

【弥生】「もう…いいの。本当に悪いのは、美咲じゃなくて私、だったから…」


当然受かるとみんなに思われていたぶん、弥生のショックも大きかったようだ。
弥生は就職に舵を切った。
最初は再受験を目指していたが、勉強に身が入らなかったようだ。
浪人しても合格する保証はないと言って、自分で就職への進路変更を決めた。


【翔斗】「……なんていう話も、もう、昔話になったな…」

【陽介】「おまえも来春、大学卒業だろ? 就職は決まったのか?」

【翔斗】「ああ、東京に出ることになったよ。陽介…あとは、よろしく、な…」

【陽介】「まかしとけ。おまえの大切だった人を、粗末にゃ扱わないよ」

就職に転向した弥生は、地元であちこち会社巡りをした。
たまたま陽介の就職した会社に行ったとき、
そこの社長さんが弥生を気に入って、ぜひにと誘った。

弥生も、知り合いが誰もいない会社よりも、陽介のいるほうが安心だったらしい。
会社では一年先輩にあたる陽介が、弥生に親切に仕事を教えた…と陽介は言っている。

実は教えようとして失敗ばかりの陽介を、弥生がフォローしていたのだが、
そんな実態を俺が知ってることは秘密だ。
俺も弥生とそれくらいの連絡はとっていた。

【陽介】「弥生のことは心配するな。俺が守ってやるさ」

【翔斗】「ああ。あいつが一緒なら、おまえの心配もいらんだろう…」

【陽介】「俺が守られるほうかいっ!」

陽介が弥生に告白して半年になる。
弥生もそれを受け、二人は今、うまくやっている。

俺は、春には東京に行く。

せめて、二人の今後を遠くから祝福してやろう。
『陽介なんか早くふっちまえよ』、と…。

【陽介】「何なんだよその祝福はっ!」

【翔斗】「やべっ、声に出しちまった…」



Ending No.1 陽介&弥生カップルEND

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