【翔斗】「きっとウが正解にちがいない。ウだあああ!!」
そしてついに、合格発表の日を迎えた。
俺は会場まで行って、自分の受験番号があるかどうかを、
目を皿のようにして必死に探した。
【翔斗】「ええと…5963…5963は…」
掲示板には、受験番号がずらりと並んでいる。
5952、5956、5957、5960…5963…
【翔斗】「あった! あったぞ俺! やったぁーーーーーっ!」
あのとき、「ウ」を選んでいたのが正解だった。
「オ」を選んでいたら、落ちていたかもしれない。
歓喜にわき上がる俺に、弥生が声をかける。
【弥生】「難波君、受かったんだね。おめでとう。本当に…おめでとう」
【翔斗】「ありがとう! 春からは一緒に大学生活を楽しもう、早田…いや、やよ…い、弥生さん…」
弥生がふっと戸惑った表情を見せる。
【翔斗】「あっ…いやごめん。ちょ、ちょっと浮かれて言ってみただけだよ、早田」
【弥生】「え…あの、いや…そうじゃなくて…」
弥生が急に下を向いて、涙をこぼした。
【弥生】「……私、だめだった……」
【翔斗】「…えっ…」
俺は受かった。だが、弥生が落ちていたのだ。そんな馬鹿な。
俺よりずっと成績の良い弥生が…しかも、あんなに勉強していたのに。
【弥生】「勉強は…したよ。でも、集中できなかった。これでいいのか…って」
【翔斗】「グループを外されたことか? 今野が何をやっても、おまえは気にする必要なかったのに!」
【弥生】「もう…いいの。本当に悪いのは、美咲じゃなくて私、だったから…」
当然受かるとみんなに思われていたぶん、弥生のショックも大きかったようだ。
弥生は就職に舵を切った。
最初は再受験を目指していたが、勉強に身が入らなかったようだ。
浪人しても合格する保証はないと言って、自分で就職への進路変更を決めた。
【翔斗】「……なんていう話も、もう、昔話になったな…」
【陽介】「おまえも来春、大学卒業だろ? 就職は決まったのか?」
【翔斗】「ああ、東京に出ることになったよ。陽介…あとは、よろしく、な…」
【陽介】「まかしとけ。おまえの大切だった人を、粗末にゃ扱わないよ」
就職に転向した弥生は、地元であちこち会社巡りをした。
たまたま陽介の就職した会社に行ったとき、
そこの社長さんが弥生を気に入って、ぜひにと誘った。
弥生も、知り合いが誰もいない会社よりも、陽介のいるほうが安心だったらしい。
会社では一年先輩にあたる陽介が、弥生に親切に仕事を教えた…と陽介は言っている。
実は教えようとして失敗ばかりの陽介を、弥生がフォローしていたのだが、
そんな実態を俺が知ってることは秘密だ。
俺も弥生とそれくらいの連絡はとっていた。
【陽介】「弥生のことは心配するな。俺が守ってやるさ」
【翔斗】「ああ。あいつが一緒なら、おまえの心配もいらんだろう…」
【陽介】「俺が守られるほうかいっ!」
陽介が弥生に告白して半年になる。
弥生もそれを受け、二人は今、うまくやっている。
俺は、春には東京に行く。
せめて、二人の今後を遠くから祝福してやろう。
『陽介なんか早くふっちまえよ』、と…。
【陽介】「何なんだよその祝福はっ!」
【翔斗】「やべっ、声に出しちまった…」
Ending No.1 陽介&弥生カップルENDトップに戻る