第七話
【翔斗】「えーい、後白川法皇にちがいない! こっちだあ!」
そしてついに、合格発表の日を迎えた。
俺は会場まで行って、自分の受験番号があるかどうかを、
目を皿のようにして必死に探した。
【翔斗】「ええと…5963…5963は…」
掲示板には、受験番号がずらりと並んでいる。
5952、5956、5957、5960…5965…
【翔斗】「…な、ない……お、俺の受験番号が…ない…」
俺は落ちたのだ。
俺はぼうぜんとその場に立ち尽くした。
「鴨川の流れと双六のさいころと比叡山だけは思い通りにならぬ」
と言ったのは白川法皇じゃないか…知っていたのに、なぜ間違ってしまったんだ。
あそこが正解なら、また別の運命が待っていたかもしれなかったのに。
ただ固まっている俺に、声をかけてきた人がいた。
【弥生】「難波君…」
【翔斗】「早田か…お、俺…だめだったみたいだ。おまえと一緒に大学生には…」
【弥生】「そ、そっか…。でも、進学だけが全てじゃないよ。就職、がんばって…」
当然のごとく合格した弥生。思えば、実力どおりの結果だったのかもしれない。
高校を卒業して、俺は就職活動を始めた。
あちこち会社めぐりをした中のひとつに、陽介の就職した会社があった。
【陽介】「翔斗さあ、もしもうちで内定もらえたら、もうここに決めない?
いつつぶれるか分かんないような情けない会社だけど、働き心地はそんなに悪くないしー」
【社長】「北島君。キミさえもっとマジメに働けば、うちがつぶれる心配はないんだけどね」
社長のメガネがキラッと光った。
【陽介】「ひっ! しゃ、社長、聞いてたんスかっ! えーっと、肩をおもみしましょうか、はは…」
【社長】「なんなら、難波君を雇ってみてもいいんだよ、キミのかわりに、ね…」
【陽介】「そっ、それはお許しをぉぉぉ!」
【翔斗】「じゃあ社長、そういうことで、よろしくお願いします!」
【陽介】「こらあっ! よろしくお願いするなよっ!」
結局俺は、陽介の会社に雇われることになった。同学年だが陽介よりも後輩になる。
まさか職場まで陽介と一緒になるとは思わなかった。これが腐れ縁というやつだろうか。
弥生は堅実に、大学生活を送っているらしかった。
俺は今でも弥生が好きだが、仕事が忙しくて会う機会もなく、まだ告白できずにいる。
そのうち大学のイイ男に先を越されるんじゃないか…と心配したが、
どうしたことか、弥生のそんな色恋沙汰の噂は一切聞かなかった。
【陽介】「大学に行った先輩に聞いた話だけどさあ、早田って、恋愛に全然興味ないらしいよ」
【翔斗】「高校時代には、一時期、彼氏っぽい奴を作ってたこともあったぞ。
俺が内心すげぇ嫉妬してたから、よく覚えてる」
【陽介】「でも今じゃ、友達は多くても、浅い付き合いばかりって聞いてる。
ひょっとして、おまえが告白しに来るのを待ってるんじゃないの? この色男!」
陽介はからかい半分にそんなことを言うが、俺はそうは思えなかった。
高校時代の終わり頃から、なんとなく、弥生は心を閉ざしたようなところが感じられた。
でも、もしも陽介の言う通りなら…と期待して、
俺は暇を作って弥生に会ってみることにした。
【弥生】「高校の時は、いろいろありがとう。すごく感謝してるよ。
でも私、なんとなく人との間に壁ができちゃって。うわついた話は、私に向かないみたい」
弥生はまるで、俺が告白したいのを知っていて、それをさえぎるかのような雰囲気だった。
告白されてから俺を傷つけるより、
告白させないように先手を打っているようだった。
俺はとうとう弥生に告白することができなかった。
弥生も誰とも付き合うことなく卒業し、大きな会社に就職し、遠く離れていった。
【美咲】「あんた、まだ弥生のこと忘れてないの?」
県外就職した今野が、激しい人間関係の争いに耐えられなくなって帰ってきたのは、
弥生が大学を卒業し就職した年の二年後だった。
【美咲】「うちの会社の連中も、あんたみたいに一途だったら、私もやめずにすんだのにな…」
【翔斗】「一途っていうか、執念深いだけかもしれないな、俺は」
【美咲】「つくづく嫌な男ね。その執念ってやつで、私にいつまで嫉妬させ続ける気?」
【翔斗】「………は? それって、おい…」
【美咲】「わ…私が弥生に冷たくしてたのも、ある意味、あんたのせい…なんだからね。
あんたが、弥生のほうばっかり向いてるから…」
【翔斗】「な、なんなんだよ、それ…」
【美咲】「私じゃ、不足とでも言うの?」
【翔斗】「いや、不足ってわけじゃないけど、そんな急に言われても」
【美咲】「ならいいわ。私も、難波君を見習って、いつまでも…執念深くなるから…」
人生は、意外な展開を見せることもある。
【美咲】「難波君の気持ちが私に向いてくれるまで…ずっと、待ってる、から…」
Ending No.6 美咲告白END
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そしてついに、合格発表の日を迎えた。
俺は会場まで行って、自分の受験番号があるかどうかを、
目を皿のようにして必死に探した。
【翔斗】「ええと…5963…5963は…」
掲示板には、受験番号がずらりと並んでいる。
5952、5956、5957、5960…5965…
【翔斗】「…な、ない……お、俺の受験番号が…ない…」
俺は落ちたのだ。
俺はぼうぜんとその場に立ち尽くした。
「鴨川の流れと双六のさいころと比叡山だけは思い通りにならぬ」
と言ったのは白川法皇じゃないか…知っていたのに、なぜ間違ってしまったんだ。
あそこが正解なら、また別の運命が待っていたかもしれなかったのに。
ただ固まっている俺に、声をかけてきた人がいた。
【弥生】「難波君…」
【翔斗】「早田か…お、俺…だめだったみたいだ。おまえと一緒に大学生には…」
【弥生】「そ、そっか…。でも、進学だけが全てじゃないよ。就職、がんばって…」
当然のごとく合格した弥生。思えば、実力どおりの結果だったのかもしれない。
高校を卒業して、俺は就職活動を始めた。
あちこち会社めぐりをした中のひとつに、陽介の就職した会社があった。
【陽介】「翔斗さあ、もしもうちで内定もらえたら、もうここに決めない?
いつつぶれるか分かんないような情けない会社だけど、働き心地はそんなに悪くないしー」
【社長】「北島君。キミさえもっとマジメに働けば、うちがつぶれる心配はないんだけどね」
社長のメガネがキラッと光った。
【陽介】「ひっ! しゃ、社長、聞いてたんスかっ! えーっと、肩をおもみしましょうか、はは…」
【社長】「なんなら、難波君を雇ってみてもいいんだよ、キミのかわりに、ね…」
【陽介】「そっ、それはお許しをぉぉぉ!」
【翔斗】「じゃあ社長、そういうことで、よろしくお願いします!」
【陽介】「こらあっ! よろしくお願いするなよっ!」
結局俺は、陽介の会社に雇われることになった。同学年だが陽介よりも後輩になる。
まさか職場まで陽介と一緒になるとは思わなかった。これが腐れ縁というやつだろうか。
弥生は堅実に、大学生活を送っているらしかった。
俺は今でも弥生が好きだが、仕事が忙しくて会う機会もなく、まだ告白できずにいる。
そのうち大学のイイ男に先を越されるんじゃないか…と心配したが、
どうしたことか、弥生のそんな色恋沙汰の噂は一切聞かなかった。
【陽介】「大学に行った先輩に聞いた話だけどさあ、早田って、恋愛に全然興味ないらしいよ」
【翔斗】「高校時代には、一時期、彼氏っぽい奴を作ってたこともあったぞ。
俺が内心すげぇ嫉妬してたから、よく覚えてる」
【陽介】「でも今じゃ、友達は多くても、浅い付き合いばかりって聞いてる。
ひょっとして、おまえが告白しに来るのを待ってるんじゃないの? この色男!」
陽介はからかい半分にそんなことを言うが、俺はそうは思えなかった。
高校時代の終わり頃から、なんとなく、弥生は心を閉ざしたようなところが感じられた。
でも、もしも陽介の言う通りなら…と期待して、
俺は暇を作って弥生に会ってみることにした。
【弥生】「高校の時は、いろいろありがとう。すごく感謝してるよ。
でも私、なんとなく人との間に壁ができちゃって。うわついた話は、私に向かないみたい」
弥生はまるで、俺が告白したいのを知っていて、それをさえぎるかのような雰囲気だった。
告白されてから俺を傷つけるより、
告白させないように先手を打っているようだった。
俺はとうとう弥生に告白することができなかった。
弥生も誰とも付き合うことなく卒業し、大きな会社に就職し、遠く離れていった。
【美咲】「あんた、まだ弥生のこと忘れてないの?」
県外就職した今野が、激しい人間関係の争いに耐えられなくなって帰ってきたのは、
弥生が大学を卒業し就職した年の二年後だった。
【美咲】「うちの会社の連中も、あんたみたいに一途だったら、私もやめずにすんだのにな…」
【翔斗】「一途っていうか、執念深いだけかもしれないな、俺は」
【美咲】「つくづく嫌な男ね。その執念ってやつで、私にいつまで嫉妬させ続ける気?」
【翔斗】「………は? それって、おい…」
【美咲】「わ…私が弥生に冷たくしてたのも、ある意味、あんたのせい…なんだからね。
あんたが、弥生のほうばっかり向いてるから…」
【翔斗】「な、なんなんだよ、それ…」
【美咲】「私じゃ、不足とでも言うの?」
【翔斗】「いや、不足ってわけじゃないけど、そんな急に言われても」
【美咲】「ならいいわ。私も、難波君を見習って、いつまでも…執念深くなるから…」
人生は、意外な展開を見せることもある。
【美咲】「難波君の気持ちが私に向いてくれるまで…ずっと、待ってる、から…」
Ending No.6 美咲告白END
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