第六話

ここは、あれだけ頑張った古文だから読めるはずだ。もっと集中して読んでみよう!

俺は答案用紙にかじりつくようにして古文を読んだ。

【翔斗】「はああああぁぁぁぁぁっ! うおおおおぉぉぉぉぉっ!」

すると、まるで何かに覚醒したかのように頭脳がパワーアップし…
…ということは、アニメでしか起きないらしい。
読めないものは読めなかった。

【翔斗】「あーもう時間がない! 適当にマークして次に進もう。全部終わってから考え直す!」

俺は古文のところは問題も見ずに適当にマークだけして次に進んだ。
しかし古文で時間を消費しすぎたのが災いして、とても時間が足りず、
古文に戻って考え直す時間など残らなかった。

国語の失点は痛かったものの、他の教科は、それなりにできた。

あとから答え合わせをして、俺はびっくりすることになる。
問題も読まずに適当にマークした古文が、偶然、半分以上正解だったのである。
世の中にはこういう偶然の幸福もあるものだ。

弥生は当然のごとく合格し、俺は驚くべきことに合格したのだ。

どっちにしても、合格は合格だ。たとえ偶然でも受かれば勝ちだ。

【翔斗】「早田、やったぞ! 一緒に合格だあ! これから一緒に大学生活を楽しもうぜ、弥生!」

【弥生】「えっ…なんで急に名前で呼ぶの…?」

【翔斗】「これから、また付き合い長くなるんだから、いいじゃないか。弥生じゃ嫌か?」

【弥生】「嫌じゃないけど…じゃあ私も、翔斗君て呼んでみようかな」

合格テンションに乗って、俺たちは名前で呼び合う仲に発展した。


学部が別々なのではっきりと分からないが、弥生にはなかなか友達ができなかった。
いや、弥生が友達を作ろうとしなかった。

【翔斗】「もしかして、まだ高三のこと、引きずってるのか…?」

【弥生】「そういうわけじゃない、けど…うん」

いや、そういうわけはある。今野との決裂だけじゃない。
卒業前は、クラスの女子がみんな敵に回ったような状態だった。
人と近づくのが怖くなっても不思議じゃない。

俺は告白を迷った。

弥生は、付き合いの長い俺とは、何の抵抗もなく話せる。
それでも、自分の心の中に固いガードを作って、俺をもその中に入れてくれなかった。
告白することは、その固いガードを突き破って、もっと深い関係を要求することになる。
それは今の弥生に混乱を起こすだけだろうと考えた。

【翔斗】「今野は県外で就職したし、あのクラスの連中もばらばらになった。
過去のことは、もう気にする必要はないよ…」

【弥生】「そう…だね。分かってる。でも私、なぜか誰も信じられなくなっちゃった…」

【翔斗】「誰も…って俺もか? 俺くらいは信じてほしい…」

【弥生】「あ、もちろん翔斗君のことは信じてるよ…!」

嬉しい言葉である。
これなら、告白したら本当に付き合えるかもしれない。

【弥生】「私って…みんなに嫌われて、みんなに避けられて…。
でも、全部私のせいだからしかたないよね。私が、悪いんだから…」

【翔斗】「いや、俺は弥生が好きだ。
ほかの誰がおまえを嫌っても、みんなが避けようとも、たとえそれが弥生のせいでも…
俺は、弥生が一番好きだ…付き合ってくれ。ずっと俺と一緒にいてくれ」

俺の告白を聞いて、弥生は一瞬、驚いた顔になったが、即答してくれた。

【弥生】「うん、付き合うよ。私も、翔斗君と付き合いたい。
私には翔斗君しかいないから、いつでもずっと翔斗君のそばにいるよ」

【翔斗】「俺も弥生しかいない。だから、いつだって弥生のそばにいるよ…」

【弥生】「うれしいっ。約束だよっ!」

【翔斗】「うん、約束だ…ずっとずっと…約束だ…」

俺は幸せの絶頂にあった。
念願の大学に受かり、そして、ずっと片想いだった弥生と付き合って…。
これほどのハッピーエンドがあるだろうか。


ところが…

【翔斗】「おー弥生、待たせたな。一緒にお昼食べに行こうぜ」

【弥生】「ねぇ翔斗。さっき翔斗と話してた女の子、誰?」

【翔斗】「あ? あれは俺と同じクラスの沢本さんだよ。こないだ休んだ授業のノート借りてて…」

【弥生】「翔斗には、沢本さんって子もいるんだね、私だけじゃなくて…」

【翔斗】「あの人にはノートを借りただけだよ。他に何もない」

弥生は、俺がほかの女性と近づくのを神経質なくらい恐れるようになった。

【弥生】「えーっ! 翔斗、合宿に行くんだって?」

【翔斗】「サ…サークル活動でさ…今度の土日、一泊二日だけだよ」

【弥生】「いつだって私のそばにいるって言ったのに? 約束したのに?
翔斗、もう私のそばなんか嫌になっちゃったの?」

【翔斗】「そんなことないってば。一泊二日だけ。すぐに帰ってくるから!」

【弥生】「一緒に行く人に、女の人はいないよね?」

【翔斗】「サークルだから男も女もいるけど、旅館ではちゃんと別々の部屋に泊まるよっ!」

【弥生】「ほかの女と、一緒の旅館に泊まるの? 翔斗…私、翔斗を信じてた…のに…。
翔斗、その合宿は行っちゃダメ! ずっと私のそばにいるのよっ!」


トラウマのせいで、弥生は新しい友達を作れない。
そのぶん俺にべったりになることは予想していたが、俺は、
弥生にべったりされることは嬉しいことだと思っていた。

【弥生】「翔斗…。昨日は夜中の十二時半まで、翔斗と話してた女がいたけど、まさか…」

【翔斗】「それは俺の母親だっ。俺の下宿に来て、話がはずんだだけ…」

【弥生】「翔斗のお母さん…って、声が若いんだね…私はてっきり…翔斗が誰かと…」

【翔斗】「てか、俺の下宿の夜十二時半のことをどうして知ってるんだよ…?」

【弥生】「だって、何でも知りたい…。
翔斗は私の…私だけのものだから、どんなことでも知っていたいの…」

俺はもはや、限界に達していた。
だがもしも、別れ話など切り出そうものなら、生命の危険を覚悟しなければならない。

【弥生】「ねぇ翔斗、安心してね…。
もしも私たちの邪魔をしようとする女が現れたら…すぐ、居なくしてあげるからね。
私たち二人だけの世界で、私はずうっと、ずうーっと、あなたのそばを離れないわ」



Ending No.4 弥生ヤンデレEND

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